サービス紹介


再生医療等製品の研究開発

免疫細胞

NK細胞

<背景>

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、体内の異常な細胞やウイルスに感染した細胞を識別して攻撃する、主要な免疫細胞です。その歴史は古く、1976年にハーバーマンらのグループによって最初に報告されました[1]。
NK細胞は、がん化した細胞や、ウイルス感染によって表面のタンパク質が変化した細胞を見つけることができます。そのため、T細胞やB細胞のような「獲得免疫」とは異なり、「自然免疫」で働く細胞とされています(T細胞やB細胞は直ちに働けないため)。しかし、NK細胞はB細胞が作る抗体を認識することができ、抗体が結合したがん細胞を攻撃する能力があるため、獲得免疫が成立した時にT細胞やB細胞と協働して働くこともできます。一般的には、キラーT細胞(T細胞の一種)とNK細胞が、細胞内にグランザイムとパーフォリンを含む顆粒を有し、異常な細胞を直接破壊することができます。

<当社の強み>

NK細胞は骨髄で生まれて成長し、成熟したNK細胞は、単一ではなくヘテロな集団(異なる特性を持った集団)と言われています[2]。
当社では、NK細胞を活性化及び成熟化させる過程の中で、CD16[3]を持ったNK細胞を選択的に増殖させることができます。CD16とは、わかりやすくいうと、がん細胞を攻撃するのに利用できる膜タンパク質です。CD16は抗体に結合することができるので、当社NK細胞を、抗体医薬であるリツキサン[4]やハーセプチン[5]と併用することにより、がん治療において相乗効果が期待されます。
また、当社NK細胞の培養期間は2週間~3週間であり、2週間でNK細胞の細胞数は10億を超え、3週間では50億を超えます。3週間の培養後も活性(K562に対する細胞傷害性)は維持しています。NK細胞の二大特徴である細胞傷害活性とインターフェロンγの分泌能力が高いことも、当社のNK細胞の特徴の一つです。
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樹状細胞ワクチン

<背景>

樹状細胞とは、免疫細胞の一種で、免疫システムの司令塔の役割を果たす細胞であり、これは1972年にアメリカのラルフ・スタインマンによって発見されました。
樹状細胞は、T細胞・B細胞・NK細胞と異なり、がん細胞やウイルス感染細胞を直接攻撃することはできません。しかし、がん細胞やウイルスの特徴(抗原とも呼ばれる)をT細胞に伝えることで、一度出会った病原体を記憶する「獲得免疫」を誘導します。また、様々なタンパク質を分泌して、NK細胞の活性化を助ける役割も持っており、司令塔としての役割を果たします。樹状細胞自体は攻撃する能力を持ちませんが、抗原特異的T細胞やB細胞の誘導する際には、欠かせない存在です。ただし、これを実現するためには、がん細胞や病原体の特徴を正確に捉える必要があり、樹状細胞を利用するためには抗原の開発が重要となっています。
がんに対する標準療法として、手術・化学療法・放射線療法が知られていますが、第4の治療法として「免疫療法」が注目されています。この免疫療法として、世界で薬事承認が得られている治療法が、三つ存在しています。一つ目は、血液がんに対するCAR-T療法[6]です。二つ目は、抗体医薬である免疫チェック阻害薬[7]です。そして三つ目が、日本ではまだ未承認ですが、米国で承認されている前立腺がんに対する樹状細胞[8]になります。

<当社の強み>

樹状細胞は、血液から採取した単球を活用することで、試験管内で未成熟な状態の樹状細胞を育てることができます。当社は、欧米や日本で開発された方法[9]によって、単球を未成熟樹状細胞に分化させ、さらにそれを確立された方法で成熟樹状細胞へと育て上げています[10]。
具体的には、ヒトでの臨床応用が進んでいる樹状細胞の製造を、厳格な品質管理がされた製造施設[11]で実施しており[12]、再生医療等安全性確保法下で安全にヒトに投与可能となっています。また、樹状細胞をがん治療やワクチンに利用する場合、がんの目印となる抗原の開発が必要ですが、当社は世界で最も有名ながん抗原であるWT1[13]をがんの目印として用いており、それも当社の強みになっています。
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NKT細胞

<背景>

NKT細胞とは、N K細胞とT細胞の特徴を併せ持つ、特別な細胞です。NK細胞とは上記の通りであり、T細胞とは免疫細胞のなかでも主要なもので、ウイルスや細菌と戦う力を持った細胞のことです。
NKT細胞の存在は、アルバート・ベンデラクらによって最初に報告されています[14]。同グループと日本の谷口克らによって、さらに特徴付けが進み、T細胞とNK細胞の両方の性格を持った細胞として主要な免疫細胞の地位を確立しました[15]。T細胞ががん細胞や病原体のアミノ酸からなるペプチドを認識するのに対し、NKT細胞は病原体等の糖脂質を認識することが明らかになっています[16]。
がん治療におけるNKT細胞の主な役割は、NK細胞・T細胞に対してアジュバント(活性化を手助けする)として作用することです。また、NKT細胞は樹状細胞の成熟化にも影響を与えることができます。樹状細胞は、免疫反応の司令塔として重要な役割を担い、NKT細胞は樹状細胞の成熟化を助けることで、免疫システムががん細胞に対してより効果的に対応できるとされています。

<当社の強み>

NKT細胞を活性化させるものとして、人工的な糖脂質が有効であることが証明されていますが、当社は人工的に合成した糖脂質を保有しており、これを効率的にNKT細胞に提示する樹状細胞の製造方法を確立しています。具体的には、糖脂質を結合し、NKT細胞に提示できるCD1dという細胞表面タンパク質を発現している成熟樹状細胞の製法を開発しました。これにより、体内で抗腫瘍効果を発揮できるNKT細胞を誘導することができます。この製造方法を持つNKT細胞誘導型樹状細胞を、当社ではαNKTと名付けており、この製法は特許技術となっています。
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幹細胞

脂肪由来間葉系幹細胞

<背景>

まず、受精卵は、細胞分裂を繰り返し成長する過程で、「胚盤胞」という段階になります。胚盤胞には、外側と内側に細胞があり、内側の細胞は「内部細胞塊」と呼ばれています。そして、受精卵の胚盤胞時期にこの内部細胞塊を取り出すと、これらは、「ES細胞[17]」と呼ばれる、自己複製能と多分化能を維持するものになります。
一方、成人したヒトの皮膚の細胞は、特定の役割に分化が進んでおり、死を待つしかありません。新しい細胞に変化させたり、若返らせたりすることはできず、その役割のまま老いていくのが通常です。しかし、人工的に4つの遺伝子[18]を活性化させると、ヒトの皮膚細胞も分化がリセットされ、幹細胞のようになることが発見されました。(後に、山中伸弥氏によってiPS細胞と名付けられました)。これらの細胞は、再生医療の分野で期待されていますが、倫理的な課題やがん化するリスクといった安全面での課題により、依然としてハードルが残っています。
このような中、最近期待されている幹細胞が、成体の幹細胞、いわゆる「体性幹細胞」です。体性幹細胞の種類は、具体的には、骨髄の造血幹細胞や間葉系幹細胞、脂肪組織の間葉系幹細胞、脳の神経幹細胞、毛包バルジ領域の表皮幹細胞、筋肉の衛星細胞等が含まれます。
間葉系幹細胞(MSCs)は、骨髄、脂肪、歯髄、子宮内膜等に存在します。1976年に骨髄を培養した際に、繊維芽細胞様の細胞が得られると報告があり、それが最初の発見であると考えられています[19]。
脂肪由来の間葉系幹細胞は比較的入手しやすく、培養も簡単であることから最も臨床で利用されているMSCsです。

<当社の強み>

当社は、脂肪由来の間葉系幹細胞(MSCs)を、お腹の脂肪吸引手術によって入手します。これは一時間以内に行われる、簡単な方法です。MSCsは培養によって増幅され、一旦ストックされます。ストックされたMSCsは、培養回数が記録され、培養回数が6以上にならないように維持されます。また、培養回数が5以下のものを臨床で利用することで、老化していないMSCsを使用しています。
現在、一般的な臨床研究では、共通マーカー・細胞の形態・多分化能といった指標でMSCsの品質を規定しています。当社は、これら品質に関しても、製造の度に確認作業を行い、一定以上の品質を保っています。
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歯髄由来間葉系幹細胞

<背景>

間葉系幹細胞の原材料として、骨髄、脂肪組織、胎盤、臍帯、子宮内膜、肢芽細胞、唾液腺、皮膚、そして歯髄等があります。そのなかでも、歯髄は、主に「親知らず」から分離するもので、比較的容易に入手し易く、侵襲性も少ないと考えられています。
また、歯髄由来の間葉系幹細胞は、他の間葉系幹細胞のなかでも有効性が高く、骨髄由来の間葉系幹細胞と比較しても機能に関して遜色ないことが示唆されており[20]、期待されている間葉系幹細胞のひとつです。
しかし、ヒトから採取する過程は(親知らずを抜く過程は)簡単ですが、その後、親知らずから歯髄を分離する方法は煩雑であり、歯科医の特別な器具と技能が必要であるため、研究開発は限定的になります。

<当社の強み>

当社は、歯学部との共同研究によって歯髄由来の間葉系幹細胞の分離方法や培養方法、保存方法、そして輸送方法を確立しています。実際に、当該手法にて製造した歯髄由来間葉系幹細胞は、自己複製能と多分化能を有することが示されています。当社は現在、基礎研究から臨床応用の探究的臨床試験を行っており、早い段階で実用化できるように研究開発を行ってまいります。
[1] 1976年Cancer Research誌第36巻615-621項
[2] 2020年blood advances誌第4巻1388-1406項
[3] NK細胞の細胞表面に発現している膜タンパク質である。CD16は抗体に結合することから、NK細胞が抗体の結合した敵を攻撃する際に利用している。
[4] 一般名:リツキシマブ
[5] 一般名:トラスツズマブ
[6] キムリア、一般名チサゲンレクルユーセル
[7] オプジーボ、一般名ニボルマブ
[8] プロベンジ、一般名シプリューセル-T
[9] 1994年JEM誌第179巻1109-1118項
[10] 2014年Clinical Cancer Research誌第20巻4228-4239項
[11] 再生医療等安全性確保法下でPMDAによる査察を受けております。
[12] 製造許可番号:FA5230001
[13] ほとんどのがん細胞で発現していることが知られているがん抗原。がんが増殖し、生存するのに必要なタンパク質
[14] 1991年Nature誌第353巻68-71項
[15] 1994年JEM誌第180巻1097-1106項;1996年PNAS誌第93巻11025-11028項
[16] 1997年Science誌第278巻1626-1629項)
[17] Embryonic Stem細胞
[18] 山中因子;Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc
[19] 1976年Exp Hematol誌第4巻267-274項
[20] 2000年PNAS誌第97巻13625-13630項

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